AWSのマルチアカウント管理は、組織規模の拡大やセキュリティの重要性が高まるにつれ、複雑化しがちな側面があります。AWS Control Towerは、このマルチアカウント管理をシンプルかつ安全に行うためのサービスです。個別にアカウントを増やすだけでは監査やガバナンスが追いつかなくなることがあります。AWS Control Towerの特徴として、ガードレールやベストプラクティスを初期段階から適用する「Landing Zone(着陸ゾーン)」を自動的に構築することが挙げられます。本記事ではAWS Control Towerの概要・主な機能から導入手順、そしてSAA試験対策に役立つポイントまで解説していきます。
AWS Control Towerとは
AWS Control Towerは、マルチアカウント環境を安全かつ効率的に管理するためのサービスです。AWS Organizationsを併用することで、複数のAWSアカウントを一括管理し、セキュリティやコスト管理、ガバナンスを強化できます。これにより企業やチームごとにアカウントを増やしても、ベストプラクティスに沿った運用を続けやすくなるのが大きな特徴です。
主な機能
AWS Control Towerの主な機能は以下のとおりです。
- AWS Organizationsとの統合
AWS Organizationsを使ってアカウントを中央管理し、組織単位(OU)ごとにガードレール(ルール)を適用。 - ガードレール(Guardrails)の設定
セキュリティ強化やコンプライアンス遵守のために、AWSが推奨する設定やポリシーを自動的に適用可能。 - AWSアカウントの自動プロビジョニング
あらかじめ用意されたベストプラクティスに沿ったテンプレートを使い、短時間で新規アカウントをセットアップ可能。 - シングルサインオン(SSO)
複数アカウントに対するログイン情報を統合し、管理者とユーザーの利便性を向上。
これらの機能を組み合わせることで、マルチアカウントを安全かつ簡単に管理できる点がAWS Control Towerの最大の魅力です。
メリット・デメリット
AWS Control Towerの導入にあたって、以下のようなメリットとデメリットがあります。
- メリット
- セキュリティとコンプライアンスの強化:ガードレールによるルール適用で、ポリシー違反やリスクを事前に防止。
- 運用負荷の軽減:複数アカウントを一元管理できるため、チームの運用コストを削減。
- 導入の手軽さ:AWSのベストプラクティスが標準で適用されるため、設定ミスを減らしながら短時間で環境を構築可能。
- デメリット
- カスタマイズの制約:AWS Control Towerが想定している標準的な構成に乗る必要があるため、細かい要望に応じた設定変更が難しい場合がある。
- 追加コストの懸念:無料枠内では使えない要素も含まれ、特に複数のサービスと連携するケースではコストが増える可能性あり。
具体的なユースケース
企業や組織でマルチアカウントを導入している場合、AWS Control Towerは大変役立ちます。例えば、部門ごとにアカウントを分けて課金管理を行いつつ、同じガードレールを適用してセキュリティ基準を統一したいケースです。また、スタートアップ企業が今後のスケールを見据えて「最初からベストプラクティスで構築したい」という場合にも、Control Towerを活用することで運用フェーズの手戻りを減らせます。
- 組織全体でセキュリティ基準を統一したい
- 部門ごとにアカウントを分けたコスト管理を行いたい
- 将来的なアカウント増加に備え、運用負荷を抑えたい
これらのケースでは、AWS Control Towerのガードレールと自動アカウント作成機能が大きく役立ち、運用を効率化します。
導入手順
実際の導入ステップを簡単にまとめると、以下のようになります。
- AWS Organizationsの作成
まずはマスターアカウントを作成し、組織管理を有効化します。 - Control Towerの開始
AWSマネジメントコンソールから「Control Tower」を選択し、初期設定を進めます。 - ガードレールの選択
推奨されるガードレールを適用するか、自社のポリシーに合わせてカスタマイズするかを検討します。 - Landing Zoneのセットアップ
Control Towerが用意するベストプラクティスに基づいた環境(Landing Zone)を構築します。 - 各アカウントの作成と検証
必要に応じて新しいアカウントを生成し、設定されたガードレールやポリシーが正しく動作しているか確認します。
これらのステップを踏むことで、マルチアカウント構成が自動的にベストプラクティスに準拠する形で構築されるため、セキュリティとガバナンスが高いレベルで担保されます。
SAA試験対策:AWS Control Towerで抑えておくべきポイント
SAA(AWS Certified Solutions Architect – Associate)の試験では、マルチアカウント戦略やガバナンスの観点から、AWS Control Towerの存在意義と機能が問われることが多いです。特に下記の点を押さえておくと良いでしょう。
- AWS Control Towerの目的
マルチアカウント管理とガバナンスの自動化。 - ガードレール(Guardrails)の仕組み
強制型と検出型の2種類があり、設定と監視の役割が異なる。 - 他サービスとの連携
AWS Organizationsとの深い連携、IAMやAWS Configとの役割分担など。 - Landing Zoneの概念
ベストプラクティスが初期段階から適用された環境整備。
これらを理解しておくと、試験でマルチアカウント運用やセキュリティガバナンスを問われた際、Control Towerを中心にした回答がしやすくなります。
まとめ
AWS Control Towerは、複数のAWSアカウントを一元管理しつつ、セキュリティやガバナンスを高めるための非常に有用なサービスです。企業全体で統一されたルールを適用できるため、AWSの利用が拡大しても運用の透明性と効率性を維持しやすくなります。カスタマイズ性に制約はあるものの、初心者や中級者にとっては十分にメリットが大きく、特にSAA試験対策としても学ぶ価値が高いでしょう。マルチアカウント戦略を検討している方や、AWS環境のガバナンスを強化したい方は、ぜひAWS Control Towerの導入を検討してみてください。